猛暑転じて福となす

連載 すずなり

夏も盛り。この数年の夏の猛威は殊更で、猛暑日どころか今年からは酷暑日まで定められてしまいました。諸外国の方々が日本を訪れる楽しみとして、四季の美しさに触れることも醍醐味の一つだったように思いますが、最近では日本に住む私たちでさえ、特に春や秋は感じることができずに次の季節となるような気がしてしまいます。かつての日本では春夏秋冬の四季で分け、さらに四季それぞれを6つに分けることで1年間を24等分した、二十四節気という時の区切りを目安に暮らしを整えていました。この二十四節気でいえば、8月の今頃は大暑にあたり、1年の中で最も暑さが厳しい時期を指します。まさに、今。ですが次の節気となる立秋は、来週の8月8日頃からを指すのです。立秋は、そろそろ夏の暑さも極まり、秋に向けて移ろい始める頃という意味をもつのですが、これはどうでしょう。二十四節気が日本でも用いられるようになった平安時代の頃と比べると、明らかに気象状況も変わってしまい、今では節気が指す時期の言葉と外の気温とが全く合致しないように感じますよね。ただ、日本に居ながらにして、暑い夏と寒い冬だけで過ごしてしまうのは少しもったいないようにも思います。

鈴懸本店のある福岡市では、夏も盛りになると福岡城址のお堀では蓮や睡蓮が見事な花を咲かせます。きっと福岡市民の多くはこのお堀の蓮の花が咲き始めると夏を感じ、やがて深い緑色をした大きな葉だけとなり、その葉が褐色に変化していく様子で夏から秋への季節の移り変わりを感じている人も少なくないでしょう。その時期にしか咲かない花々を愛でたり、行事食といわれるその時々の特別な食べ物、旬の野菜などを暮らしに上手に取り入れることで、今の時期しかできない楽しみ方はたくさんあると思うのです。例えば、上生菓子はお茶席に用いられるものとは限りません。蓮の葉を花屋さんなどで調達し、菓子器に見立て、水滴を2、3粒。そこに今にも咲きそうに蕾が膨らんだ蓮の花の様子を映した上生菓子「清蓮」をそっと置けば、夏の時期だけの楽しいお茶の時間が楽しめます。蓮の葉がコロコロと水を弾く様子も涼やかです。「蓮」や「桔梗」のお干菓子もお盆のお供物としてだけではなく、冷房で冷えた体に暖かいお茶や、珈琲に合わせていただくのも趣があって良いものです。暑い外から帰ってひと息つく時は、爽やかな味わいの緑茶を冷やして、お茶菓子に「巻き水」はいかがでしょう。見た目からも名前からも、暑さに疲れた体がなんだか少し癒されていきませんか?少しの知恵と工夫で、うんざりする夏の暑さを楽しみに変えることができるかもしれません。別のものになぞらえて表したり、別の用途に用いる見立ての文化は、日本独特な手法です。少し知識や知恵があれば、より深く楽しむことができる大人ならではの遊び方とも言えるかもしれません。和菓子の世界も日本ならではの見立ての遊び心がたくさん見て取れます。平安時代の頃には予想もつかなかった夏の盛りが今年もまだまだ続きそうです。そんな時は涼しい室内で、今しかできない見立ての遊びで夏を楽しく過ごしてみませんか。

※「清蓮」 販売期間 8月10日〜18日
※「お干菓子(蓮・桔梗・巻き水)」は、博多本店・岩田屋・大丸の盆催事場にて販売中。
商品が無くなり次第、販売終了となります。
販売期間・詳細につきましてはHPのお盆用のお供え菓子」お干菓子 4種|鈴懸 すずかけをご確認ください

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